短い答え:最高56.7℃、最低-89.2℃
地球の公式な最高気温は56.7℃です。公式な最低気温は-89.2℃です。この2つの値は、世界気象機関(World Meteorological Organization, WMO)の極端気象・気候アーカイブ(Weather and Climate Extremes archive)に基づいています。最高気温は1913年7月10日に測定されました。場所はアメリカ・カリフォルニア州デスバレー(Death Valley)のファーニスクリーク(Furnace Creek)です。最低気温は1983年7月21日、南極のボストーク基地(Vostok Station)で記録されました。
2つの記録には、数値とともに場所と日付が添えられています。そのため「最も暑い」という言葉は、特定の観測所の特定の日を指すと考えられます。原文は、WMOのウェブサイト(wmo.int)にある極端気象・気候アーカイブの地図ページと、WMOのプレスリリースで直接読めます。
デスバレーの1913年の記録と2020年の54.4℃の検証発表
WMOは2020年8月16日、デスバレーで測定された54.4℃(130°F)を検証すると発表しました。同じ発表によると、この値が認められれば1931年以降で地球の最高気温になります。また、観測史上3番目に高い気温になるとも書かれています。
この発表は、古い記録をめぐる見方も伝えています。発表文には「一部の気象史家は、古い気温記録の正確さに疑問を投げかけてきた」とあります。ただし、この文が伝えているのは、疑問があったという事実だけです。1913年の記録が変更されたという内容は、この発表にはありません。
この箇所からは、新しい測定値と公式記録が別の段階にあることがわかります。54.4℃は測定されましたが、発表の時点では検証を待つ値でした。ニュースで「観測史上最高」という表現を見たら、まず検証前の値かどうかを確かめるとよいでしょう。
ボストークの1983年の記録、日誌に書かれた-89.2℃
ボストーク基地は南緯77°32′、東経106°40′にあります。基地の標高は3420mです。この最低気温の記録は、ロシアのレニングラード(サンクトペテルブルク)にある北極南極研究所(Arctic and Antarctic Research Institute)が確認しました。
WMOの世界最低気温の項目の解説は、この値の根拠を次のように示しています。「しかし、実際に報告された気温は-89.2℃だった。これは月間要約日誌(図1)に記されている。私は1991年1月、ボストークの気象事務所でこの日誌を写真に撮った。」上の文は、英語の解説を訳したものです。
同じ解説は、クラウスとフラッド(Krause and Flood)の1997年の文献にある-89.4℃を誤りとみています。解説によると、この誤りは次の過程で生じた可能性が高いとされます。摂氏を華氏に換算して-129°Fに丸め、それを再び摂氏に戻したというものです。この説明から、同じ観測が2つの値に見えるときは、元の観測日誌が基準になることがわかります。また、単位を行き来する過程で小さな差が生じうることも読み取れます。
北半球の最低気温、1991年グリーンランド・クリンクの-69.6℃
WMOは、1991年12月22日にグリーンランドの自動気象観測所で測定された-69.6℃(-93.3°F)を、北半球の最低気温と認定しました。観測地点はクリンク自動気象観測所(Klinck AWS)です。この観測所は北緯72°18′、西経40°28′、標高3216mにあります。WMOによると、この記録は極端気象・気候アーカイブの「気候探偵」たちが約30年後に見つけ出したものです。
この記録は、ロシアの2つの観測地の記録を上回りました。ベルホヤンスク(Verkhoyansk)は1892年2月に-67.8℃を記録しました。オイミャコン(Oymyakon)は1933年1月に、同じく-67.8℃を記録しました。
測定から公式認定まで約30年が経っています。このことは、公式の順位が固定されたリストではないことを示しています。資料を見直せば、記録を持つ場所が変わることもあると読み取れます。また、先に見たボストークとクリンクは、どちらも標高3000mを超える高地にあります。2つの極端な低温記録を並べるときは、観測所の標高にも目を向けたいところです。
1931年ケビリの55.0℃と高温記録の比較
東半球の最高気温は、1931年7月にチュニジアのケビリ(Kebili)で記録された55.0℃です。そのほかの高温記録もWMOの発表に載っています。クウェートのミトリバ(Mitribah)は、2016年7月21日に54.0℃を記録しました。パキスタンのトゥルバット(Turbat)は、2017年5月28日に同じく54.0℃を記録しました。
高温記録を項目ごとに並べると、次のとおりです。地球の最高は、アメリカ・デスバレーのファーニスクリークで、1913年7月10日の56.7℃です。東半球の最高は、チュニジアのケビリで、1931年7月の55.0℃です。そのほかの高温記録は、クウェートのミトリバとパキスタンのトゥルバットで、どちらも54.0℃です。検証の対象は、デスバレーで2020年8月16日に測定された54.4℃です。
こうして並べると、第2節の「1931年以降で最高」という表現が、ケビリの記録の年と重なることがわかります。54.4℃が「3番目」とされたのも、56.7℃と55.0℃に次ぐ位置と読めます。韓国で使われている暑さの基準が気になる方は、熱帯夜と猛暑特報の基準がどこに書かれているかもあわせてお読みください。
| 記録地点 | 国・地域 | 気温 | 測定時期 | 記録の区分 |
|---|---|---|---|---|
| ファーニスクリーク(デスバレー) | アメリカ・カリフォルニア州 | 56.7℃ | 1913年7月10日 | 地球の最高気温 |
| ケビリ | チュニジア | 55.0℃ | 1931年7月 | 東半球の最高気温 |
| ミトリバ | クウェート | 54.0℃ | 2016年7月21日 | そのほかの高温記録 |
| トゥルバット | パキスタン | 54.0℃ | 2017年5月28日 | そのほかの高温記録 |
| ボストーク基地 | 南極 | -89.2℃ | 1983年7月21日 | 世界の最低気温 |
| クリンク自動気象観測所 | グリーンランド | -69.6℃ | 1991年12月22日 | 北半球の最低気温 |
まとめ
本文で見た記録には、1つの共通点があります。公式の気温記録は、数値1つだけのものではありません。場所、日付、確認の根拠がひとまとまりになった記録です。ボストークの-89.2℃は、観測日誌の写真によって裏づけられました。グリーンランドの記録は、約30年後に認定されました。
残る疑問もあります。2020年のデスバレーの54.4℃についてのWMOの発表は、検証の予定を知らせるものです。この値の最終判定は、WMOアーカイブの該当項目で別に確かめる必要があります。原文を読むときは、まずボストークの項目にある図1の日誌の写真から見るとよいでしょう。